当社の若手社員には職種に関わらず、誰でも海外で仕事を経験できる制度がある。ここではその「海外短期トレーニー制度」を利用し、実地経験を積んだ社員の体験談を紹介しよう。
STORY1
海外短期トレーニー制度とは
日新電機グループは、中国・タイ・ベトナムに生産拠点を持ち、グローバルな生産活動を行っている。各国の発展に伴う電力設備市場拡大の流れを読み、当社グループは早くから現地法人を立ち上げてお客様の信頼を得てきた。
信頼の鍵となるのが「品質の高さ」「オーダーメイド対応の細やかさ」。各国の生産拠点では、日本からの駐在員の指導の下、日本のものづくり技術やお客様との信頼関係構築のノウハウを積極的に取り入れている。会社としても、海外の社員向けにさまざまな研修プログラムを実施している。
制度開始以来、26人がこの制度を利用。与えられたテーマや受入先の課題を、現地スタッフ・関係組織を巻き込んで悪戦苦闘しながらも解決し、帰国後はその経験を仕事に活かしている。
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STORY2
営業部 Aの体験談
現地社員にサッカーボールを手渡すA(手前左)
■営業活動のさらなる展開に向けて
行き先はタイ、ベトナムの2カ国。民間企業向けに電力設備の営業を担当するAは、海外での営業活動を学び、日本国内での営業活動展開につなげるべく3カ月間の研修に挑んだ。
日新電機タイ株式会社(NET)や日新電機ベトナム有限会社(NEV)で独自に展開する装置部品の製造・受託事業に興味があったA。自分の顧客にもアジア圏に進出している企業は多く、何か関連するビジネスができないかと考えていたことがこの制度を利用するに至ったきっかけだ。
NETの顧客訪問に同行して見積提出や価格交渉を行った他、タイの顧客情報を社内で共有するため、日新電機の海外営業部や調達部と協力し日系企業約1100社を調査しデータベースにまとめあげた。さらに自分の顧客の海外工場などにも訪問し事業をPR。その縁で大型案件の提案に結びついた時には人脈の大切さを実感したと言う。
東南アジアの他国にも出張し、商習慣や文化の違いを感じた。
Aは「宗教により食事や飲み物に厳しい制限があるため、顧客との懇親会では出席者の宗教などの事前確認が必須。食事の席には日本とは違う部分で配慮が必要である事を痛感した。」と語るA。
NEVでは組立作業の現場へ。梱包フィルムを手作業で巻く工程で、フィルムが破れる、しわになるなどしているのに気付いた。常に改善を考える現場の慣習に従い、自分でも改善方法を考え、効率よくきれいに巻く装置を提案。採用され、実際の装置がすぐ出来上がるスピード感には感銘を受けたそうだ。
現地で仕事をするうちに、Aはビジネスをつなげるだけでなく、海外子会社との関係をつなぐ役割を考えるようになった。そんな時NEVに従業員のためのサッカーグラウンドができると聞き、所属する日新電機サッカー部の部員と相談し「サッカーボール10個」を寄付したところ大変喜んでもらえたと言う。
この研修を「自らが動かないと何も起こらない場所で仕事をすることで、改めて自ら動くことの大切さ、動いた結果が実感できる面白さを体験できた。」と締めくくるA。
今では、現地での経験と人脈を活かし、日本で通常の営業業務のほかに、NET・NEVと協力し装置・部品事業拡大の活動も行っている。
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STORY3
製造部 Yの体験談
現地社員と肩を組むY(左)
■組立経験を活かし指導方法を伝える
行き先は中国。受配電機器事業部の製造部で配電盤や遮断器の組立を担当しているYは、同様の製品を製作している中国の工場で、海外での仕事の進め方・言葉や文化の違いを学ぶとともに、工場内の5S・安全・品質・効率化の向上を進めるべく2カ月間の研修に挑んだ。
初めての海外での仕事に不安はあったが、普段から製品を中国で作るための準備に関わっていたこともあり「通訳がいる」「文化も大して違わないだろう」「普段どおりの仕事で何とかなるだろう」と考え研修に臨んだY。
しかし現場に入り、異国での洗礼を受けることになる。
研修では製造現場の改善活動に取り組んだ。この工場では製品を作る際、部品を床に直置きして作業しており、床や部品に傷が付くことがあった。改善案を考えて作業者に改善してもらおうとしたが、指示を全く聞いてくれない。Yは「日本と同様の指導の仕方では動いてくれない」と早々に文化の違いを痛感する。改善活動は思うように進まなかった。
困り果て、日本の上司に電話で弱音を吐いたそうだ。そこで上司に「自身で改善せず、どうすれば作業者に作業を改善してもらえるかを考えてみなさい」と助言をもらった。それを機に「何を」「どのように」「どうする」「そうすると」「どうなる」を問いかけ、根気強く指導することを心掛けた。部品を床に直置きする事で品質的に「何が」「どうなる」を問いかけ、今後の対策として「何を」「どのようにするか」を作業者に考えてもらうようにしたのだ。その結果、作業台を作製し直置きしない作業方法に変わっただけでなく、作業台を台車として使えるようにすることで作業効率が上がった。つまり、改善後の良い結果を想像してもらうことが改善の重要性の理解につながったのである。
これをきっかけに、作業者から多くの改善提案が出されるなど主体的に取り組むようになり、改善活動が見違えるように展開された。
「この制度を通じて、異国で自分の能力を高めることができ、指導方法や思いの伝え方を学べた。特に海外での仕事では、『全てが自分の判断・決断という自覚』『言語の壁、異文化への適応力』が重要だと実感した。」と語るY。
この経験を活かし、今も指導する際には、なぜこの作業をやるのかの意味を理解してもらうため、すぐには答えを出さずに考えてもらっているそうだ。Yは今後も色々な経験を重ねたいと考えていると締めくくった。
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STORY4
生産技術部 Tの体験談
和気あいあいと食事を楽しむT(左)
■部品装置事業全体を体験
行き先はベトナム。生産技術部で生産設備の設計・製作業務を担当するTは、海外での業務を通して自分の業務の幅を広げ「グローバルに業務を遂行できる機械系エンジニア」のモデルとなるべく4カ月間の研修に挑んだ。
装置や部品を受注生産している日新電機ベトナム有限会社(NEV)での研修にあたって、自社の生産設備の設計や製作に関わる普段と近い仕事をする感覚を持っていたT。しかし現地で普段の仕事の範囲を超えた事業全体を体験し、さまざまな発見があったと言う。
最初は機械のスキルや製造ノウハウを活かし、製造工場の工程改善を提案した。大型ラックのフレーム組立は大小さまざまな80点程の金属部品を、都度寸法を測り位置決めして溶接することから、組立に1台6時間かかっていた。そこで一部パーツを差し込むだけで正しい位置にはまるよう工夫をした結果、組立時間を1台4時間に削減し、未熟な作業者でも一定の品質が保てるようになった。
次に設計業務では、使い勝手・強度・コスト・作業性の良い設計を検討。提案内容が受注につながるうれしさと、要求を図面にする大変さを実感した。
また、現地では日本国内では縁遠かった営業活動も行った。必要とされる装置・部品の仕様打ち合わせから製品の納入までを行うのだが、言葉はベトナム語が主。片言のベトナム語とボディーランゲージなどを駆使したが、コミュニケーションには大変苦労したそうだ。
最初はコミュニケ―ションがうまくとれず強制退却の寸前となったが、自ら積極的に動くことで周りの人と協力できるようになったと言う。
「文化も言葉も違う中、顔や手が真っ黒になるまで製品を作りあげ、設計で悩む中で、現地の人と一緒に行うものづくりの楽しさを感じた。この研修で、海外での仕事の大変さ、楽しさを経験し、より一層海外への興味が湧いた。」と語るT。
研修後もベトナムで日系企業工場の製造ライン立ち上げから納品に至る対応に関わり、その功績が評価されている。これは現在のNEVの受注拡大にもつながっており、今もNEVとの懸け橋として、設計支援やNEV実習生の来日時のサポートを行っているそうだ。
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STORY5
製造部 Sの体験談
現地社員から貰ったケーキを手に
記念撮影をするS(左)
■女性の海外短期トレーニー制度の先駆けとして
行き先はベトナム。開閉機器事業部の製造部で受変電設備の保護装置の製造を担当するSは、工場の実態を把握し、工場の改善、生産性・品質・安全性の向上とともに、異文化を学ぶことによる自身のスキルアップを図るべく3カ月間の研修に挑んだ。
日新電機で働く女性社員の中で「海外で働きたい」「トレーニーへ行ってみたい」と考えている人たちの先駆けになるべく制度を利用したS。
日新電機ベトナム有限会社(NEV)工場での作業を見て、気になったのが組立方式だ。作業台で組み立て、製品を移動、作業台へ戻り一定数できると次工程に移るという「まとめ生産」が行われ、無駄な動きを繰り返しスペースも多く使っている。そこで作業者ではなく製品が動く流れ生産の体制を構築しようと考えた。
実現に向けて動き出したものの、日本とは勝手が違い作業者は指示通りに動いてくれない。Sは「改善する=作業が楽になる」ことを繰り返し説明し「是非協力してほしい」という熱意を伝え続けた。その結果想い通じて協力してくれるようになり、何とか思い描いた通りのラインを構築。改善前に比べ、生産量が1日1.2倍増、組立場所も225㎡から90㎡と約60%の省スペース化に成功した。
当初は言葉がわからず殻にこもっていたが、駐在員のアドバイスを機に、積極的なコミュニケーションを心掛けたと言う。言葉は分からなくても「よく使う単語を覚える」「言いたいことを理解するように心掛ける」「図や絵、道具や身振り手振りを使う」この3つの駆使で意思疎通がうまくいき改善の成功につながり、次第に頼りにしてくれるようになったそうだ。
ポスターは日本語とベトナム語で表記
この研修を「何事も一人では成し遂げられないから、自身が挑戦することの意味やメリットを理解するまで伝え、率先垂範で周りの協力と信頼が得られるのだと痛感した。材料調達において日本で簡単に入手できる材料も入手が困難で値段も高い。海外では材料も考え設計しないとコストは下がらない現実をフィードバックしていきたい。自身の視野が広がったことと、何より国外にも心強い仲間ができたことに感謝している。」と締めくくるS。
今もNEVから社員の結婚や工場の様子など近況報告の連絡があるそうだ。NEVとのつながりを通じ、製品だけでなく工場の設備まで相談の幅が広がった。この経験を活かし「自ら動く事で周りを動かせる」人になるよう努力し、今後は自部署だけでなく、関係部署にも提案し全体の改善に努めていきたいと語った。
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